気がつけば2022年も終盤となりました。
今年もたくさんの映像を制作しましたが、弊社では毎年機材のアップデートを行なっています。
テクノロジーの進化のスピードは年々加速し、時代の変化に追いつくためにも機材の入れ替えはとても重要な作業です。
そこで今回は導入した機材の紹介と、実際の映像制作現場で使用した感想をお伝えしていきます。
【Blackmagic URSA Mini Pro 12K】
12K映像を収録できるデジタルフィルムカメラです。
詳細なスペックはBlackmagic Design社の公式ページを参照していただきたいのですが、この価格帯で12K映像が収録できるカメラは他に見当たりません。
後述するシネマレンズと組み合わせると素晴らしい映像を収めることができます。
今年スタートした新事業である「12K映像素材販売サイト」ではこのURSA Mini Pro 12Kで収録した映像素材を取り揃えています。
12Kの面白いところは、12,288×6,480という巨大なサイズにあると思います。
このサイズだともはや「写真」よりも大きいため、映像から切り出したスナップショットが十分に使えるクオリティとなります。
映像もあとからクロップして使えますから、制作の手法も変わるのではないかと感じています。
この通りとても良い機材なのですが、色々と使いやすくカスタマイズするためにはそれなりにお金がかかります。
そこは業務用といったところですが、たとえばトップハンドルや三脚用クイックリリースのセットだけでも6万円。
電子ビューファインダーにいたっては24万円ほどします。
実際には本体だけではなく、こういったアクセサリーが無ければ業務には使えませんから、最終的にはなかなかの出費にはなります。
とはいえ映画の制作現場で使われるシネマカメラに比べれば手を出しやすい価格ですので、弊社のような小規模チームで動く制作会社や、フリーランスの方にはおすすめでできるカメラなのかなと思います。
実際の撮影現場では後述するザハトラーの三脚に載せて使うことがほとんどでした。
これまで使用していた、主にミラーレス機を載せるような三脚はさすがに重量の関係で使用できません。
レンズを装着するとかなりの重さです。
50-100mmを装着してザハトラーの三脚に載せた様子(札幌市内イベントホールにて)
実際に12Kで収録した映像を果たして再生できるのか?と不安でしたが、Mac StudioでBlackmagic RAW Playerを使ってプレビューしてみると意外にサクサクと動いてくれました。
今後は「12K映像素材販売サイト」で販売する素材を収録するためにこのカメラをいろいろな場所へ持って行きたいと思います。
そしてそのレビューも随時お伝えしていきます。
【Apple Mac Studio】
4年ぶりにデスクトップコンピューターをアップデートしました。
2019年に出たMac Proも気になるところではありましたが、少しオーバースペックなのでは?という懸念もあったため、このタイミングでMac Studioを導入しました。
M1 Ultraチップと128GBのメモリを搭載した「特盛」にしましたが、これは本当に買って良かったと思えました。
Adobe製品との相性も良く、特に動画の読み込みや書き出しは劇的に早くなりました。
本当に「デスク」に置くことができるコンパクトなマシン(弊社オフィスにて)
デジタルコンテンツの制作がメインの弊社にとって、ここの速度が上がることは売上や利益に直結してきますので、今のところ2022年のベストバイと言えるかもしれません。
Premiere Proで8K映像の編集から、Lightroomを使ったラージサイズのパノラマ作成、エクセルを開きながらのオンラインミーティングと、なにをしていても常に静かなコンピューターです。
これまで活躍してくれたWindowマシン(それなりのスペックです)では動画の読み込みを始めるとすぐに唸っていましたので、かなり快適になりました。
とはいえ映像制作系ではまだWindowsじゃないと動いてくれないアプリケーションも多数ありますので、今はオフィスの片隅に待機して時折活躍しています。
Mac Studioは拡張性も十分で、裏面の接続端子には3枚のモニターとスピーカーに加えて、HDDクレードル、オーディオインターフェースや収録用のコンデンサーマイクとUSBハブも繋いでいます。
これでもまだ前面の端子にUSB-Cが2つとSDカードスロットがありますので、作業用のSSDを繋いでSDカードから動画ファイルを読み込むといった使い方をしています。
個人的には電源ボタンが前面にあってくれたらなとは思いましたが、それ以外は文句の付け所が無い素晴らしいマシンだと感じています。
ちなみに、実物は思っていたよりも小さく軽いので、長い撮影旅行に出るときなどは旅先に持っていくのもアリかもしれません。
【 Aputure amaran P60c】
これまでも照明はAputureを気に入って使ってきましたが、新たに一台導入しました。
コンパクトながら力強い明るさを持ち、RGBマルチカラーLED、アプリケーションを使った遠隔制御にも対応しています。
以前はドーム型の「Aputure LS C120d II」を現場に持ち込んで撮影を行なっていましたが、今回はそのサブ的な照明として買ったつもりでした。
ですが最近はamaran P60cで十分仕事がこなせるので、メイン照明機材となりつつあります。
現場到着後、すぐにセットアップが可能(釧路 猛禽類医学研究所にて)
収納も簡単で、バッテリーもNP-Fシリーズが使えますので、他の機材との併用ができるあたりも高ポイントです。
また大型の照明になると自立させるための「脚」もそれなりのものを持ち込む必要がありました。
amaran P60cですと軽くて使いやすいManfrottoのスタンドを一本持っていけば良いので、機動力が上がりました。
以前のメイン照明、LS C120d IIを使用したVR撮影の様子(立命館慶祥高校にて)
気になる部分としては、専用のケースにソフトボックスを一緒に入れられないという点でしょうか。
これはAputureの特徴と言えるかもしれませんが、全部ひとつのケースに収められたらなと毎回感じています。
そういった点を差し引いても、使いやすく、素晴らしい製品だと思います。
弊社ではこれまでLS C120d II、amaran 100X、Aputure AL-MX(ミニライト)、今回のamaran P60cとAputureをかなり信頼して現場で活用しています。
映像の質を高めるには照明と音声がカギだということは昔から変わりません。
【SONY α1】
これまで動画はSシリーズ、写真はRシリーズと棲み分けがされてきたSONYのαですが、どちらもいいとこ取りのフラッグシップモデルが登場しました。
弊社の用途でいくと、動画に特化したSシリーズがぴったりでしたので、初代α7s→α7s II→α7s IIIと毎回マルチカム撮影のために2台づつ購入してきました。
そのため写真は二の次といった立ち位置でやってきましたが、近年クライアントのコーポレートサイトに使用するような「しっかりとした写真」を自社で撮影する機会が増えたため、どちらも対応できるα1を購入しました。
α7s IIIが2台買える価格であり、写真用に別途α7rを購入する手もありましたが、結果的にα1とα7s IIIの2台運用で満足行く環境が手に入りました。
詳しいスペックはSONY公式サイトで見れますが、8Kをボディのみで収録できる動画撮影機能と5,000万画素を超える写真撮影機能を1台で行えることで、一気に仕事の幅が広がったと実感しています。
【SIGMA CINE LENS 18-35mm&50-100mm】
初めてのシネマレンズです。
この2本があれば18mm-100mmまで実用面では十分な画角をカバーできます。
これまでミラーレスによる動画制作がほとんどだっため、本格的なシネマレンズの重さに驚きました。
慣れるまで取り回しはなかなか大変ですが、先述したURSA Mini Pro 12Kと組み合わせた4K以上の映像はまさに映画です。
案件を選ぶ機材にはなりそうですが、今後増えるであろう12K映像の収録時に使用して、改めてレビューを書きたいと思います。
【Tilta Mirage Matte Box】
意外と重要なマットボックスです。
晴天時のフレアやゴーストを軽減することが目的ですが、初めて一緒にお仕事をするクライアントさんの不安を取り除くのが真の目的だったりします。
この時代、コンパクトな機材で良いものが作れるようになりましたが、さすがに野面のミラーレス(マイクもフィルターも照明、リグも何も装着していない状態)でカメラマンが現れたら「?」となるのが通常です。
特に、制作現場に行くことの多い担当者さんですと、「前回の制作会社はしっかり色々準備してくれていたけど、今回は大丈夫かな」と考えるかもしれません。
野面のミラーレスでも最終的なクオリティに満足してもらえば問題ありませんが、完成まで至る道のりで、不安要素は一つでも少なくしておくことがお互いにとってベストだと考えています。
もちろん良いところはそれだけではありません。
今回、Tilta Mirage Matte Boxの導入に踏み切ったのは、上記のメリットに加えてNDフィルター(遠隔操作付き)機能が搭載されていたからです。
NDフィルターの重要性は動画制作者なら誰でもご存知だと思いますが、レンズに装着するタイプですと非常に取り回しが面倒です。
このTilta Mirage Matte Boxはワンタッチで取り外しができますし、屋内→屋外のような露出がブレる状況でもコントローラーを使えばワイヤレスでNDレベルを調整できます。
マットボックスを装着した状態(弊社オフィスにて)
先日は屋外でインタビュー収録をした際に、時折雲に隠れてしまう太陽の動きに合わせてNDレベルをコントロールしたりと、使える場面はかなり多いです。
カメラのゴツさを出しつつ、非常に実用的な所が気に入っています。
【Sachtler FSB 8 Mk II flowtech75 GS】
ザハトラーのビデオ三脚です。
主にURSA Mini Pro 12Kを載せて使っていますが、非常に使い勝手の良い三脚です。
安定感はもちろんですが、開閉や伸長もストレス無くできるため、現場での取り回しが向上しました。
弊社にある三脚の中は一番大きいのですが、その割にとても軽く、遠征の際も必ず持っていく一本です。
ドキュメンタリー収録の様子(広島県にて)
インタビュー収録や販売用の素材撮影など、シビアな場面ではこのザハトラーを使っていますが、機動力を重視した場面では主にGITZOが活躍します。
ザハトラーがラインナップに加わり、三脚も状況に合わせた使い分けが出来るようになりました。
番外編【Tenba 38″ Rolling Tripod】
写真左下の長いバックがTenba 38″ Rolling Tripod(広島空港にて)
こちらは機材ではありませんが、機材を持ち運ぶためのトローリーです。
主に三脚を数本まとめて入れることが出来ます。
三脚の場合、付属のキャリングケースを使うことが多いと思いますが、これが複数本になると遠征の際に非常に煩わしくなると思います。
ずっとそんなな悩みがあったのですが、Tenba 38″ Rolling Tripodで解決しました。
車輪もついていますので、重くなっても快適に移動ができます。
ちなみに弊社では主に三脚2本、照明スタンド、Dji-rs2(ジンバル)、アクセサリーを入れて使っています。
今回は新機材の一部を紹介させていただきましたが、このほかにも映像制作を行う上で非常に使えるアイテムがたくさんありますので、別の機会で個別に紹介したいと思います。