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April 11,2023
ドローンとアクションカメラを組み合わせて360度VR映像を撮る方法

2022年に行政機関の研究所と仕事をする機会があり、ドローンを飛ばして空撮メインの動画を制作しました。

札幌市豊平区にある寒地土木研究所(Dji Air2sで撮影)


千島桜の撮影の様子


5月の北海道は桜が楽しめます


お隣の社屋の屋上を借りて施設全景のスチール撮影


DJI Air2sになってセンサーサイズが大きくなったので、非常に重宝しています

研究所の紹介ということで、施設の広さや札幌中心部からの位置関係などがわかりやすく伝わるような内容を目指して制作に臨みましたが、今回は先方さんから「360度映像を動画の中に入れたい」という要望がありました。
通常の地上撮影ですと360度映像は割と簡単に撮れる時代になってきましたが、空撮で360度となると選択肢は少ないです。
本格的に撮影する場合はかなりの予算と機材が必要になります。
今回は予算の兼ね合いもあり、実験ベースで試してみたいという要望を実現するために、最小のシステムを組んでみました。

まず360度用のドローンですが、DJI社のMavic Proを使いました。

左 Mavic Pro(360度用)
右 DJI Air2s(通常の空撮用)

このMavic Proに360度撮影用のカメラとモジュールを装着する必要があります。
これは専用のものがあり、アクションカメラで有名な「Insta360」から出ています。

【必要機材】
Mavic Pro
Insta360 ONE R コア
Insta360 ONE R ドローンアクセサリーパッケージ

ドローンで360度撮影するためのキットは何種類かありますが、このようにドローンからカメラを吊るすタイプの場合、飛行の安定感が失われることと、ドローン本体が映り込んでしまうという問題があります。

ドローンに吊るすタイプのサードパーティ製品

今回紹介するInsta360の専用パッケージは映り込みが一切無く、要件を満たせるものでした。
ですがこのシステムには最大の問題が一つありまして、それは後述します。

実際に組んだ様子はこのようになります。
写真を撮っておくのを忘れたため、公式サイトから写真を拝借しました。

Insta 360の公式サイトから引用

写真を見てもらえばわかりますが、ドローンの本体の上下に2つのレンズを装着すると下のレンズが脚よりも低い位置に来てしまうため、地面と接地してしまいます。
そのため離着陸時に真ん中をくり抜いた専用のポートを用意する必要があります。
大きめの柔らかいクッションなどでも代用できると思いますが、通常の離着陸は難しいと考えたほうが良いでしょう。

そして最大の問題ですが、本体を巻き込むようにモジュールを装着するため、ドローン本体の下部にある「GPSセンサー」が遮られてしまいます。
GPSを掴まなくとも飛行は可能ですが、非常に不安定な飛行になります。

ドローンは多少風が吹いている日でも、GPSがあれば送信機から手を離してもその場からほとんど動かずにホバリングしてくれます。
ですが、GPSが無い場合、そよ風程度でもモロに影響を受けるため、動いた方向と逆方向に操作をしないとドローンはどこまでも流されてしまいます。

これは問題で、単純にまっすぐ進むことも、目標に向かって進んでいくことも非常に難しくなり、高度な飛行技術が必要となります。
弊社では過去にGPSが掴めない山間などで空撮をした経験もあったため、今回の業務も問題無く遂行できましたが、初めてGPS無しで飛ばす場合は事前に訓練をしておくことをお勧めします。

なお必要機材で記載した③のドローンアクセサリーパッケージにはカメラのコア(本体)が付属していないため、②のコアも併せて調達する必要があります。
ちなみにレンタルもあります。

Insta360 ONE R (ドローン版)Mavic Pro対応
Insta360 ONE R コアモジュール+スプリットレンズモジュール+アクセサリーセット

Insta360で撮影したデータは最初に「Insta360 Studio」という専用の編集ソフトでスティッチングを行います(無料で使えます)

スティッチングとは、ドローンの上下に装着したカメラで撮影した2つの映像データを繋ぎ合わせる作業です。
公式サイトにInsta360 Studioの詳しい使い方が記載されていますので、参照しながら進めてください。
基本的には自動で簡単に繋ぎ合わせることができます。

2つの映像データの境界線に違和感が出ないように注意して作業を行なってください。

こちらが最終的な仕上がりになります。
施設の外観と敷地内にある千島桜を360度で撮影し、紹介動画の中に組み込みました。

CLIENT:国立研究開発法人土木研究所寒地土木研究所

通常の動画の中に組み込んでいるため、視点に動きを付けた編集済の映像となっていますが、YouTubeでも良く見かける自由視点の「360度映像」としてももちろん使えます。

【今回感じたこと】
①Mavic proの純正カメラと違ってジンバルが無いため細かいブレが気になること

②4Kで収録できるとはいえ、視聴者がその瞬間に見ている映像についてはサイズが1.3Kに縮小されているため、解像度は落ちる
※360度の全領域を4Kで制作する場合はとてつもなく巨大なファイルになります
参照 : 4K VR 360° 動画: 概要と制作方法

③GPSが掴めないため、ドローンのコントロールが難しい

上記の②については12Kで360度映像の収録を行えば解決されます。
現状ではInsta 360 TITAN(11K)をドローンに搭載するか、Go Proなどの4Kアクションカメラを複数組み合わせて12K収録環境を構築するしかありません。

どちらにしてもドローンを自作するなど、専用機として用意することが必要になるでしょう。
この領域でのトップは海外の制作会社「AirPano」でしょうか。
Around the World. The Best. 8K 360 video

いずれこういった360度の空撮にも取り組んでいきたいと考えています。

ちなみに今回の業務が終わってから、DJI Air2、Air2S専用の360度カメラモジュールが発表されました。
当時からすでにAir2Sを使って空撮を行うことが多かったので、こちらの製品を使いたかったのですが、現在でも日本国内向けには販売をしていないようです。
Insta360 Sphere

360度の空撮の需要は今後も高まってくると考えていて、弊社でも新たな機材の導入を検討していきたいと思います。